2014年04月01日

《資料でみる社会デザイン》「社会開発」の日本への導入の頃

社会開発の日本への導入の頃の受け止め方について、朝日新聞の記事から引用してみたい。


引用以下
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脚光あびる「社会開発」
前向きの福祉対策 本腰入れねば実現困難


朝日新聞 昭和39年7月30日(木曜日)

 総選挙きっかけに

 「社会開発」ということばが最近、にわかにクローズアップされている。この一般には耳なれぬことばを政治の”舞台”の最初に登場させたのは佐藤栄作氏。総裁選挙立候補の際、新政策のひとつにかかげたが、続いて池田首相も立候補の記者会見や三選後の諸会見でひずみ是正、福祉国家建設の重要な足がかりとして社会開発の推進を強調した。
 こうした機運を受けて、厚生省では生活環境整備、社会福祉、公害対策など国民の福祉向上に関係の深い諸施策を社会開発の名の下に積極的に推進させることを検討しはじめている。しかし社会開発の意味する内容、範囲はきわめて幅が広いので厚生行政だけでなく政府全体がこれに取組まないことには実効をあげることはむずかしいようである。


 経済の開発に対応

 社会開発とはもともと経済開発と対比して使われてきたことばである。経済面での発展を目的とするのが、経済開発なのに対し、直接国民生活の福祉向上を目ざす施策や計画が社会開発だということになる。そして社会保障と違うところは、社会保障が主として社会的な諸要因(たとえば所得格差、地域格差、不況など)のために起きた”苦難”を社会的に処理(保障)するという事後療法、消極的な役割を持つのに対し、社会開発は進んでその原因を除き、発生を予防し、さらに福祉を向上させるという予防療法、積極的な機能を果たすものだとされている。
 もともと経済開発と社会開発が均衡を保って進められることことが福祉国家建設のためにはぜひ必要なのだが、わが国ではたとえば新産業都市などの地域開発計画を見ても経済開発に片寄りすぎて、公害防止など地域住民の福祉を守る施策がなおざりにされがちなことが指摘されていた(人口問題審議会の昨年八月の答申)。そこで、厚生省は社会開発が経済成長のひずみ是正策として注目されるようになったのを機会にそのあり方を検討しはじめた。
 そしてその具体的方法として@社会開発の進め方、内容など”ビジョン”を設定する。このため専門家を集めた大規模な審議会を設ける。場合によっては関連のある既存の審議会をこれに吸収するA公害、児童福祉、精神衛生、生活環境、保健衛生など国民生活に関連の深い諸政策を「社会開発予算」としてまとめ、総合的な推進をはかるB新産業都市の開発計画を社会開発のモデルケースとして取上げ、重点的に生活福祉の向上をはかる−−。などの案を考えている。


 各省間に考えの差

 しかし、これらの諸施策は厚生省だけでなく関係各省はじめ、地方公共団体民間企業などが一致して推進せねば実現できない内容を含んでいる。生活環境の整備には住宅、道路、交通などについての都市計画が必然だし、社会開発のもう一つの重要な側面である人間能力の開発には教育、労働力の質の向上のための施策がからんでくる。
 また、厚生省が社会開発のうちとくに当面の重要課題だとしている産業公害対策につい見ても、被害者の立場を代表する同省と産業発展を重視しがちな通産省など経済官庁とでは考え方にかなりの差があるのが実情である。
 さらに、基本的な問題としては国の予算配分を産業基盤投資と生活関係投資にどう振り分けるか−−ということがある。最近の数年の政府の公共投資の構成比を見ると、経済成長策を反映して産業基盤投資の伸びが著しいのに対し、生活基盤の整備予算は頭打ち、またはやや減っている。また三十九年度予算について見ると前者は後者の四倍に近い。この比率を、四十年度からの”改定”所得倍増計画でどの程度手直しするかは、政府の施策の姿勢そのものに関係する問題であり、社会開発がどの程度進められるかも根本的にはこの点にかかっているといえそうである。

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朝日新聞 昭和39年7月30日(木曜日)
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posted by 早稲田大学早田宰研究室 at 11:20| 日記