2015年02月06日

大隈重信の「社会の結合」の思想−『國民読本』から−

 大隈重信は二次にわたり総理大臣に就いているが、その中間の時期は政界を一度引退して、学術、文化振興、出版に情熱を注いでいる。その時期に『國民読本』はまとめられている。国民の理想を顕明し、中学校の副読本教材とすることを念頭に置いたもので、全206ページである。

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 後半に「社会の結合」について著しており、それを引用する。

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大隈重信『國民読本』社会の結合

(引用)

第三章 社會の結合

御製 もろともにたすけあひつつ國民の
      むつびあふ世ぞたのしかりける

 一家仁ならば、一國仁に興る。個人の發達、一家の親和より進みて、社會共同の力を固くせば、国家はおのづから隆盛なるべく、随ひて個人もみな共に福利を享くべし。社會の結合は、自治を完うし、また憲政を資くるものなり。
 凡そ社會にありては、隣保相扶け、郷黨相結びて、禍福を分ち、利害を同じくし、善を奨め、悪を除き、公益思想の進歩を図るべし。殖産興業にありては、諸種の組合を作りて、信用を増し、生産を加へ、また公共事業にありては、公民會・青年會・在郷軍人會等の組織ありて、業務を励まし、風俗を敦くし、徳教を遍からしめざるはなし。而して公人の悖徳は、社會に悪風を伝ふること甚だしきものなれば、大いに之を慎まざるべからず。社會の美風は個人を徳化し、延いて国家を健全ならしむ。

大隈重信(1913)『國民読本』, 寶文館, P196-197
posted by 早稲田大学早田宰研究室 at 11:19| 日記